【これも、コピーライターの視点_140】

<時間の連続性>

近代化が進むにつれて分業が進行し、一人ひとりの仕事の意味は見出しづらくなった。部分が切り取られ、前後のつながりや文脈に乏しい状態に埋没することで、効率を上げてきたわけです。スーパーに陳列されている商品は、そこまでに至る経緯や背景とは無関係な顔をしてそこにある。無機の塊です。作り手の仕事を見て取ることもないその商品は物語性が薄まり、その意味で生産者(メーカー)は、消費者に共感を持って届けることが難しくなった時代だと言えます。

物語の喪失は、連続性の喪失とも言えます。連続性を失うと、わたしたちは深い思考や体系的な思考がしにくい状況に陥るように思われます。前後の関係性が見えなかったり、異なるものとの関連づけがしづらくなったりします。連続する時間があってこそ、わたしたちは思考を深めることができる。切り取られ分断された時間のなかでは、人もまた無機にならざるを得ないものです。

部分に埋没してしまうことは、人の孤独感をいっそう強めてしまうのではないか。物語が共感を生むのは、前後の文脈や全体像が見えることで、その孤独感が癒されるからではないか。時間は、連続性のなかで捉えることで、それは可能になります。わたしが企業と実践しているデザイン思考は、この時間の連続性を実感できる方が成果が上がりやすいように感じています。分業の時代は続くと思われますが、他部署との連携、立場を超えた対話によって時間を取り戻し、連続性のある時間のなかで、思考し、判断し、表現することが、デザイン思考には必須だと感じています。


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